肢体不自由の息子は生活の大半は介助を必要として、一人で出来ることはあまりない。でもその変わりなのか分からないが、周りを動かす力はなぜか備わっている。
私の趣味のひとつに競馬がある。予算を決めてその中で遊んでいるので1レースにかける金額は100円や200円なんてかわいいものである。だからこそ、少ない金額で穴馬を当てて大金を手にしたいと常々思っている。
そんな私なので運気を良くする本だったり、夢を叶える系の本もたまに読んでみたりしている。そこでよくあるのは「○○出来たらいいなぁ」「いつか旅行できたらいいなぁ」とかふわっとした願いではなく「○○したい」「○○に行きたい」と断言すること。叶えたいことを紙に書いたり口に出して言うとか。
そうか息子はこの手法を使って自分の願いを叶えているのかと。なんやかんやで息子が行きたいと言った所には行くことになるし、食べたいと言ったものは食べることになるし、ユーチューバーになりたいと言った結果、動画投稿もしている。
息子のやりたいと言う言葉にはなぜか周りを動かしてしまう力がある。そしてそれに乗っかって楽しんでいる自分たちがいる。
息子の凄いところは具体的な日にちを決めて「これがしたい」「ここに行きたい」言うところである。夢を叶えるためには期限をつけた方がいい、とそれ系の本にはよく書いてあるが、それを素でやっている。
言われたこちらの都合が合えばそれに向けて準備や細かいプランを練ることになる。たぶん息子はお願いの発注の仕方が上手なんだと思う。時期と目的をきちんと言ってくるので言われたこちらも願いを叶えやすい。
よく困るのが「何食べたい」と聞いて「何でもいい」と言われるのことだと思う。うちの場合はそれがない。「明日のメニュー決まっている?まだ決まっていないならこれが食べたい」と息子のほうから言ってくる。一見小さいことに思えるが、自分の願い通りの人生とはこういう小さいことからだと思う。
周りを巻き込んでまで自分の夢を叶えるのはちょっと…なんて遠慮してしまう人もいるかもしれない。いやいや巻き込まれるほうも実は楽しんでいる。
息子が中学生の時に、実家が函館という東京に住んでいる友達を巻き込んで函館に行ってみたいという願いを叶えた。久しぶりに友達とご両親に再会できて楽しかったし、チケットの手配も含め車椅子で新幹線に乗るという初めての経験をすることも出来た。
息子が行きたいと言わなければ「そのうちいつかね」と言って、結局友達に会うことも函館に行くことも楽しい思い出も何もない人生になっていたと思う。そう考えると息子の願いを叶えることで私もついでに巻き込まれている人も随分楽しい思いをさせてもらっている。
息子を甘やかせているだけと思われるかもしれないが、私は面倒くさがりである。人見知りだし、初めての所はワクワクするより不安で緊張するタイプ。極力ストレスがかからないように、疲れないように生きている私。だからただの息子のわがままだったら私は簡単には動かない。でも息子はそんな私を動かすお願いの仕方が出来きてしまう。
障害があって何も出来ないと思っていた息子が、実際は自分の意志で行きたいところ、食べたい物、何者になるかを決めている。息子の夢を叶える力おそるべし!
最後まで読んでいただきありがとうございました。